中高年の引きこもりの方が多いと知って、ちょっと黙った話
「引きこもり」って言葉を聞いて、自分は長いこと、20代くらいの若い男の顔を思い浮かべていた。
不登校がそのまま延長して、部屋でゲームしてる感じの、なんとなくの若者像。
自分もその一人のつもりでいた。だから、数字を見て一回黙った。
「引きこもり=若者」だと思い込んでいた
引きこもってた頃、自分のことを「若いうちの寄り道」だと無理やり思おうとしていた節がある。
今は止まってるけど、まだ若いから。あと何年かしたら、どうにか戻れるから。そういう「猶予」を勝手に自分に与えていた。
その前提には、引きこもりは若者の状態だ、という思い込みがあった。テレビで取り上げられるのも、ニュースに出るのも、たいてい若い人だった気がする。だから自分も、若さの有効期限が切れる前に動けばいい、ぐらいに思っていた。
たぶん、世間のイメージもずっとそうだった。引きこもりは思春期と地続きの問題で、不登校の続きで、若者の話。そういう空気が長くあった。
数字を見て、像が崩れた
実際に調べてみると、その思い込みはわりとあっさり崩れた。
内閣府が2022年(令和4年度)にやった「こども・若者の意識と生活に関する調査」では、15〜64歳の引きこもりは推計146万人とされている。だいたい50人に1人。
問題はその内訳だった。
- 15〜39歳(若者)…約54万人
- 40〜64歳(中高年)…約61.3万人
中高年の方が、若者より多い。
出現率で見るとどちらも約2%で、そんなに変わらない。つまり、若い世代だけの問題じゃなくて、どの年代にも一定割合でいる、という話だった。
「若いうちの寄り道」だと思ってたものが、別に若さで終わる保証なんてどこにもない、と数字が言っていた。
「中高年61万人」が初めて見えたのは最近のこと
少し背景の話をすると、この中高年の数字が世の中に出てきたのは、わりと最近のことらしい。
それまで引きこもりの調査は若い世代を中心に行われていて、40代以上はそもそも数えられていなかった。中高年の引きこもりが61万人いる、と初めてまとまった形で把握されたのは2018〜2019年あたりだった。
つまり、ずっといたのに、見えていなかっただけ。
「引きこもり=若者」というイメージは、単に中高年が数えられてなかったから出来上がっていた像だった、とも言える。数えたら、ちゃんといた。それも若者より多く。
これを知った時、自分は安心したわけでも絶望したわけでもなくて、ただ「そうか」と思って一回黙った。
歳を取りながら、その層に入っていく感覚
正直に言うと、最初に湧いたのは不安の方だった。
中高年の方が多い、ということは、自分も歳を取りながらそっち側に移っていくということで。若者の54万人から、いつのまにか中高年の61万人の方に、自分の名前が移し替えられていくような感覚があった。
「若いうちの寄り道」という言い訳が、年齢とともに静かに使えなくなっていく。猶予だと思っていたものが、ただの先延ばしだったと気づく。あの感じは、わりとしんどかった。
40代、50代になっても部屋にいる自分、というのは、当時のいちばん見たくない未来だった。
でも、61万人いるなら
ただ、しばらくして、別の捉え方もできるようになった。
中高年で61万人いるなら、自分が歳を取ってもこの状態だったとして、それは「自分だけが落ちこぼれた特殊な末路」じゃない、ということでもある。
40代でも50代でも、同じように家にいる人が、全国に60万人以上いる。その人たちが全員「人生終わった人」かというと、たぶんそんなことはない。淡々と生きてる人もいるし、途中で在宅でなんとかし始めた人もいるし、海外に出た人もいるだろう。
歳を取ってもこの層にいること自体は、別に異常事態じゃなくて、日本のどの年代にも一定の割合で起きていることなんだ、と思えるようになった。これは「だから一生このままでいい」という開き直りとは少し違って、「歳を取ったら終わり、という脅し方を自分にしなくていい」という方の安心だった。
「若くないともう無理」という思い込みも、たぶん要らない
引きこもってると、年齢のカウントダウンを自分でやりがちだ。
35歳まで、いや30歳まで、それを過ぎたらもう詰み。みたいな締め切りを勝手に設定して、その締め切りに自分で追い詰められる。
でも中高年で61万人いて、その中には途中で動き出した人もいる、と考えると、その締め切りはかなり自分で盛ったものだったな、と思う。
自分の場合も、結局抜けたのは「若いうち」と勝手に決めてた期限よりだいぶ後だった。年齢で人生の可否を判定するのは、たいてい自分の思い込みの方が厳しすぎる。そんなに早く詰まないし、そんなに早く手遅れにもならない。
もちろん、若いうちに動けたらそれに越したことはない、というのはある。ただそれは「だから歳を取ったらもうダメ」という話とイコールじゃない。
数字は、年齢の呪いを少しほどく
中高年の引きこもりが若者より多い、という数字は、最初に見た時は不安をくれるものだった。
でも結果的には、自分にかかってた「若くないともう手遅れ」という呪いを、少しだけほどいてくれた。
歳を取ってもこの状態の人は60万人以上いて、それは特殊な末路じゃない。そして、その中から動き出す人も、ちゃんといる。
年齢のカウントダウンを自分でやめられた分だけ、夜が少し静かになった気はする。締め切りに追われて何もできない、より、締め切りを下ろして一個だけ何かやってみる、の方が夜が軽い。それくらいの話だと思っている。
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