お金の苦しさ

8050問題、って言葉に胸がざわっとした夜の話

「8050問題」って言葉を最初に見た時、自分はまだ親の家にいた。

数字を見ただけで、なんか胸の奥がざわっとした。

たぶん、同じ感覚になったことのある人は、自分以外にもいると思う。

数字の意味、すぐにはピンと来なかった

最初は、「8050」が何の数字か分かってなかった。

ニュース記事をちゃんと読んでみて、80代の親が50代の引きこもりの子どもを支えてる、という意味だと知った。

読んだ瞬間に思ったのは、

「これ、何年か後の自分の話じゃないか?」

これだった。

20代後半だった自分から見ると、20年後は遠いようで遠くなかった。親が80になり、自分が50になる。今と同じ生活が続いていれば、自動的にそうなる。

別に親が死ぬ話を読まされたわけでもないのに、なんとなく夜の空気が冷たくなった気がした。

親はずっと元気、と思い込んでいた

引きこもってた頃、自分の中の親は、なんとなく「ずっと元気でいる人」だった。

実際にはそんなわけない。親も毎年確実に1歳ずつ歳を取ってる。健康診断の結果も少しずつ変わってる。

でも、家でずっと顔を合わせてると、変化に気付きにくい。親が老いていく速度を、自分の中で全然リアルに見積もってなかった

8050問題に胸がざわっとしたのは、たぶんここを突かれたからだ。

「親はずっと元気」っていう、無意識のデフォルト設定が、その数字を見た瞬間にちょっと崩れた。

漠然と怖いだけだと、夜が長くなる

そこからしばらくは、夜の検索ワードが少し変わった。

  • 親 死亡 手続き
  • 引きこもり 親が死んだら
  • 8050問題 自分

このあたりを、布団の中で何度も検索した。

検索しても、別に答えは出ない。出ないんだけど、検索せずにはいられない。

漠然とした恐怖って、輪郭がないぶん無限に膨らむ。

  • 親が死んだら詰む
  • 自分は一生家から出られない
  • 50になっても引きこもってる自分が想像できる

このあたりが頭の中をぐるぐるする。具体的に何が怖いか聞かれたら、たぶん答えられない。ただ、漠然と怖い。

一回だけ、紙に書き出した

これは引きこもりから抜けたあとの話なんだけど、ある日、紙に「自分が今、何を知らないか」を書き出してみた。

書いてみると、意外と少なかった。

  • 親の年金額
  • 親の貯金がどこにあるか
  • 家は持ち家か賃貸か
  • 親の保険の有無
  • 自分が世帯主になった時に毎月いくら要るか

これくらい。

紙に書いた瞬間、漠然と怖かったものが、ただの「知らない項目リスト」になった

ぐるぐるは、項目に変わると止まる。「分かってる」「分かってない」を仕分けられるようになるから。

社会論として読むと不安だけ膨らむんだけど、自分と親の話に降ろすと、ただのリストになる。

ここの落差は、思ってたより大きかった。

「お金」より「手続き」の方が重かった

8050問題って、お金の話だと思ってる人が多い気がする。

自分も最初そう思ってた。でも、リストを書いてみると、お金そのものよりも、お金にまつわる手続きの方が重いことに気付いた。

親が亡くなったあと、自分にやってくる手続きは、役所に行って、銀行に行って、書類を出して、人と話して、みたいなのが大半。

引きこもってきた側からすると、お金の額そのものより、「人と会って手続きする力」が長年使われてないせいで錆びてる方が、たぶん詰まる。

これが分かると、考え方がちょっと変わる。

貯金を増やすことより先に、郵送で済む申請、オンラインで済む申請があることを知っておくとか、司法書士に頼む選択肢があることを知っておくとか、そっちの方が効く。

知ってるだけでいい。今やる話じゃない。

親が元気なうちに、ぽつりぽつりと聞く

親が元気なうちにできることは、たぶん2つだけだった。

  1. 親の現在地のメモを取っておく(銀行・保険・家のことなど)
  2. 自分の手元に、少しだけキャッシュを作っておく

1のメモは、改まって聞こうとすると親も警戒する。親の体調の話とか、近所の誰々が亡くなった話とかをしてる流れで、ついでに1個ずつ聞くぐらいの速度でちょうどいい。

紙に書いたメモは、引き出しの奥にしまっておく。

2のキャッシュは、引きこもったまま作る方法がいくつかある。詳しくは別記事で書いている。

金額の大小は、ここではあんまり関係ない。「自分で引いてきた手応えのお金」が手元にちょっとある、それだけで夜の景色が少し変わる。

一回考えたら、しまって忘れる

最後に、自分の中で大事にしてることを書いておく。

8050のことを考えるのは、一回だけでいい

毎日考えてると、引きこもりの夜が全部親の死の準備で埋まる。それはしんどすぎる。

紙に書いて、引き出しにしまったら、あとは今日を生きることに戻る。

備えるのは1回、そのあとは忘れる

これでいい気がしている。

漠然と怖い、という状態と、リストを書いて引き出しにしまった、という状態は、夜の重さが全然違う。

それだけの話だった。


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