外の苦しさ

ゴミ出しが、恐怖だった朝

引きこもってた時期、週2回、決まった曜日の朝に、小さな戦場があった。

ゴミ出しだ。

ゴミ出しは、「出さない」という選択肢がない

コンビニは、無理なら行かなくていい。外出は、無理なら諦められる。

でも、ゴミ出しは、出さないと、家の中にゴミが溜まっていく。家族と住んでる場合、親が出すのを代わってくれることもあるけど、自分の部屋のゴミくらいは自分で、というのが最低ラインだった。

  • 燃えるゴミ: 週2回
  • 資源ゴミ: 週1回
  • プラスチック: 週1回

週に3〜4回、特定の曜日の朝に、家の外に出なきゃいけない

これが、引きこもりにとって、コンビニより重い定例行事だった。

「おはようございます」を言えるか、の賭け

ゴミ出しの時間は、だいたい朝7〜8時。

その時間、近所の人がちょうど動き出してる。犬の散歩、通勤、通学、他のゴミ出し。

ゴミ置き場に向かう短い道で、誰かとすれ違う可能性がある。

  • 近所のおばさん: 「おはよう、お元気?」
  • 同級生の親: 自分の顔を知ってる可能性
  • 郵便配達員: 「おはようございます」
  • 犬の散歩の人: 会釈だけでいい場合も

一番しんどかったのは、「おはようございます」と言わなきゃいけない瞬間

たった5文字。言えないんじゃなくて、言った後の表情や、その後の沈黙が怖い

深夜にゴミを出しに行ってた時期

一番ひどい時期は、深夜2時とか3時に、こっそりゴミ出しに行ってた。

深夜は誰もいない。灯りがついてる家もない。街灯だけが点いてる道を、燃えるゴミの袋を持って歩く。

  • 早朝の人通りを完全に避けられる
  • 誰とも会わない
  • 「おはよう」を言う必要がない

完全に安全地帯だった。

ただ、深夜のゴミ出しは本来ルール違反(前日の夜出しを禁止してる自治体が多い)。回収前に猫やカラスに荒らされる可能性もあるので、本当は推奨しない方法ではある。

でも、当時の自分には、深夜のゴミ出ししか選択肢がなかった

分別間違いで、注意されたら終わる、という想像

ゴミ出しの恐怖の中で、地味に重いのが、分別間違いへの恐怖だった。

  • 瓶に「違います」のシールが貼られて置いて帰られる
  • ゴミ当番の人に呼び止められる
  • 町内会の掲示板に書かれる(?)

全部、起きる確率は低いけど、起きたら人生が終わるレベルの想像になる。

実際には、ちょっと分別間違えても、シールが貼られるぐらいが関の山で、それすら大したことじゃない。

でも、引きこもり期の脳は、「ゴミ出しで目立つ=地域で認知される=世界が終わる」みたいな飛躍をする。

飛躍してる自覚はある。でも、止まらない。

「ゴミ置き場が建物内」物件の恩恵

ゴミ出し恐怖を根本的に解決したのは、ゴミ置き場が建物内にあるタイプの物件だった。

一人暮らしに切り替えた時、マンションを選ぶ基準のひとつに、「24時間ゴミ出し可能な宅内ゴミ置き場」があった。

これがあると、

  • 時間を気にせず出せる(夜でも朝でも)
  • 建物から一歩も外に出ない
  • 誰にも会わない

ゴミ出しが、「外に出る行為」じゃなくなる

これだけで、生活のストレス量が、ごそっと減った。

引きこもりで一人暮らしを考えてる人がいるなら、この条件はかなり優先度が高い、というのは、伝えておきたい。

実家暮らしで、ゴミ出し恐怖を和らげる工夫

一人暮らしができる状況じゃない、実家暮らしのまま、という場合。

自分がやってた工夫は、

  • ゴミ出しの時間を少しずらす: 7時じゃなく8時半とか。通勤ピークを外す
  • 袋を小さくする: 大きい袋は目立つ。毎回小さく出す
  • 冬は防寒で顔を隠す: マスク・フード・帽子で、誰が出してるか分かりにくくする
  • 親に代わってもらえる日は頼む: 毎回じゃなくていい、重い日だけ

全部、ゴミ出しを治す方法じゃなく、ゴミ出しの負担を減らす方法

ゴミ出しが恐怖じゃなくなる日が来なくていい

自分は今でも、ゴミ出しの日は、ちょっと身構える。

建物内ゴミ置き場があるから、誰とも会わないのは確定してる。それでも、「出すタスクがある」こと自体が、意識される

これは、たぶん一生なくならないと思う。

でも、完全に治らなくても、生活は回る。

  • 誰とも会わない環境を作る(建物・時間帯)
  • 親に任せる日があっていい
  • 深夜出し(安全な範囲で)を、つなぎで使う

週2回の小さな戦場を、毎回勝つ必要はない

何回かに一回は、負けていい。親に任せて、自分の部屋のゴミを1日足踏みさせていい。

それで、生活は回る。