「引きこもり◯◯万人」って数字を見て、ちょっと安心した話
「日本の引きこもり、推計146万人」みたいな見出しを、深夜にニュースサイトで見たことがある。
たぶん、引きこもってる時期に一度は通る景色だと思う。
数字を見たくて見たわけじゃなかった
最初にあの数字を見つけた時のこと、わりと覚えている。
別に「日本の引きこもり 統計」みたいな大層な検索をしたわけじゃない。たぶん「引きこもり 何年」とか「引きこもり 自分だけ」みたいな、もっと情けない検索をしてた途中で、たまたま内閣府の調査結果を引いてるニュース記事に流れ着いた。
引きこもってる夜って、検索ワードがどんどん卑屈になっていく時間がある。
- 引きこもり 自分以外
- 引きこもり 何歳まで
- 引きこもり 普通
このあたりを順番に踏んでいって、最終的に統計の話に当たる。
そういう経路だった。
100万人超、という数字の体感
ニュース記事の見出しは、だいたい「日本の引きこもり、推計146万人」みたいな書き方だった(2022年の内閣府調査の数字。広義の引きこもりで、15〜64歳が対象)。
その数字を見て、最初に思ったのは「多いな」だった。
東京都の人口の1割ぐらい。47都道府県のうち下から数えて何個かの県の総人口より多い。「自分みたいな状態の人間が、日本のあちこちに散らばっている」ということが、急にリアルになった。
それまで、自分は世界で唯一こうなってる人間みたいな気分でいた。少なくとも、自分の半径100mには引きこもりは自分しかいないし、SNSにも出てこないし、テレビにも映らない。
でも統計が言うには、100万人超いる。自分が思ってたよりずっと、自分は珍しくなかった。
「異常」じゃなくて「景色の一部」になる
これが、当時の自分にとっては結構大きかった。
引きこもってると、自分のことを「日本社会の例外」「異常事態」みたいに思いがちで、そう思うこと自体がさらに自分を追い詰める。
でも100万人超いるって分かると、
- 異常事態じゃなくて、日本という国に一定割合で発生する状態のひとつ
- 自分の人生だけが特別に壊れてるんじゃなくて、似たような夜を過ごしてる人が他にもいる
- 「治さなきゃいけない病気」というより「日本のごく一部の景色」
ぐらいの捉え方に、すこしずらせた。
これは「だから引きこもっていいんだ」と開き直る方向じゃなくて、「自分を責める強度を一段下げていい」という方向だった。
数字は救いじゃない、けど自責解除にはなる
正直に言うと、あの数字を見たからといって、生活が良くなったわけじゃない。
翌日も布団から出られなかったし、コンビニも怖いままだったし、親との会話も気まずいままだった。
ただ、「自分は世界に取り残された一人」という被害妄想じみた思考だけは、少し弱まった。
100万人いるなら、自分と同じ夜にこの数字を検索してる人も、たぶん全国に何人かはいる。同じタイミングで天井を見てる人がいる、という想像ができるようになった。
それは救いではないけど、自責の量が減るぶんだけ、夜が少し静かになる感じはあった。
「146万人」の中身は一様じゃない
ちなみに、調査の中身を読み込むと、引きこもりと一口に言っても状態は結構バラついている。
- 自室からほとんど出ない人
- 自室からは出るけど家からは出ない人
- 近所のコンビニまでは行ける人
- 趣味の用事の時だけ外に出る人
調査ではこのあたり全部ひっくるめて「広義の引きこもり」と呼んでいる(狭義はもっと厳しい定義)。
つまり、「引きこもり=自室から一歩も出ない人」じゃない。家からは出ない、人とは会わない、ぐらいの自分も、ちゃんとあの146万人の中に入っていた。
「自分なんてまだ軽い方だから、引きこもりとも呼べない」と思って自分を追い詰めるのも、たぶん要らない。軽くても重くても、同じ景色の一部。
数字を見て、それからどうしたか
統計を見たからといって、自分はその夜のうちに何か行動を起こしたわけじゃない。
ただ、検索ワードは少し変わった。
「引きこもり 自分だけ」みたいな卑屈な検索の代わりに、「引きこもり 在宅 仕事」とか「家でできること」みたいな、もうちょっと前を向いた検索ができるようになった。
これは大したことに見えるかもしれないけど、当時の自分にとっては「自分を珍しがる検索」から「自分にできることを探す検索」に切り替わった瞬間だった。
数字が直接何かをしてくれたわけじゃない。ただ、自責の量が一段下がったぶん、そういう検索ができる余白が生まれただけ。
数字は知っておくぐらいでいい
引きこもりの統計は、毎年のようにアップデートされる。コロナ前後で増えた、高齢化してる、女性も多い、みたいな話題が定期的に出てくる。
全部追いかける必要はない。
ただ、「自分は珍しくも何ともない、日本の景色の一部だ」と思える程度に、数字の存在だけは知っておくと、夜の検索ループが少し短くなる気はする。
100万人超いる。そのうちの一人として、今夜もこの記事のどこかで検索してる人がいる。たぶん、それでいい。
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