自分の苦しさ

引きこもりは「時代のせい」でもある、と氷河期の話で思った

「結局、自分が弱かっただけだろ」。

引きこもってる時期、何かを考え始めると、最後は大体ここに着地していた。

自責のデフォルト設定

当時の自分は、何が起きても原因を自分に寄せる癖があった。

会社を辞めたのも、人付き合いが続かなかったのも、家から出られなくなったのも、突き詰めれば「自分の意志が弱いから」「自分の努力が足りなかったから」で説明していた。

これはたぶん、引きこもってる人にわりとある思考だと思う。他人を責めるより自分を責める方が、まだ筋が通って見えるというか、世界の方を疑うより自分一人を悪者にした方が、話が早いのだ。

ただ、話が早い代わりに、夜が長くなる。「自分が悪い」で締めると、そこから先はずっと自分を削る作業になる。

たまたま見た「氷河期」という言葉

そんな時期に、引きこもりの数の話をなんとなく読んでいて、「就職氷河期」という言葉に引っかかった。

内閣府が2022年にやった調査だと、引きこもりは全国で推計146万人いて、そのうち40〜64歳が約61.3万人を占めるらしい。引きこもりというと若い人の話だと思ってたけど、実際にはいい年をした大人の方が多かった。

しかも調べていくと、国の方も、就職氷河期世代を支援する施策の中に、ひきこもりへの支援をはっきり組み込んでいることが分かった。氷河期とひきこもりは無関係じゃない、と公的にも扱われている、ということだ。

ここで初めて、「あ、これは自分一人の根性の話じゃないかもしれない」と思った。

就職氷河期というのが何だったのか

就職氷河期というのは、ざっくり言うとバブルが崩壊したあと、おおむね1990年代後半から2000年代前半に就職の時期を迎えた世代のことだ。

求人が極端に絞られていた時期で、同じ能力でも、生まれた年が数年ずれているだけで内定の出方がまるで違った、と言われている。今この世代は40代後半から50代前半にあたる。

つまり、就職の入り口というたった一回の勝負の難易度が、自分の努力とは無関係に、生まれ年だけで跳ね上がっていた世代がいる。

そして、その世代の一部が、いま中高年の引きこもりとして数えられている、と見られている。

「自分が悪い」の見積もりが、少し狂った

これを知った時、自分の中で起きたのは、感動でも怒りでもなく、計算が合わなくなった感覚だった。

ずっと「自分が悪い」で全部を説明してきたのに、その説明だと、なぜ特定の世代だけがまとまって同じ状態になるのかが説明できない。

もし本当に個人の弱さだけの問題なら、引きこもりは世代に関係なく均等にばらけるはずだ。でも実際には、入り口の時期がたまたま最悪だった人たちのところに、ぼこっと固まっている

ということは、自分が背負っていた「100%自分のせい」という見積もりは、たぶん盛りすぎていた。

全部を時代のせいにしたい、わけでもない

ここは正直に書いておくと、自分は「だから全部時代が悪い、社会が悪い」と言いたいわけではない。

実際、同じ氷河期世代でも引きこもらずに踏ん張った人はいるし、自分の中にも合わない要素はいろいろあったと思う。だから時代に全部押し付けるのも、それはそれで雑な気がする。

ただ、「自分100%」と「時代100%」の二択じゃない、ということだ。

自分の話に戻すと、たぶんこうだった。

  • 元から人付き合いが得意じゃなかった(自分側の要素)
  • そこに、入り口の難易度が異様に高い時期が重なった(時代側の要素)
  • 一回つまずいたあとの「やり直しにくさ」も、その時代の空気が強めていた

合わない要素と、運の悪いタイミングが重なって、こうなった。自分の取り分は、思っていたよりずっと小さかった。

自己責任論を、静かに疑っていい

世の中には「全部自己責任」という言葉が、わりと軽く転がっている。

引きこもってる側は、その言葉を一番真に受けてしまう。誰よりも自分に厳しく、誰よりも先に「自分のせいです」と頭を下げている人が多い印象だ。

でも、生まれ年だけで就職の難易度が変わっていた事実を一個知るだけで、その「全部自己責任」は、思ったより根拠が薄いと分かる。

自己責任論に正面から反論する必要はない。ただ、「本当にそれ、全部自分の取り分か?」と静かに疑うくらいのことは、してよかったと思っている。

「だから抜け出せ」には繋がらなかった

例によって、この気づきも「だから前を向こう」みたいな話には繋がらなかった。

時代のせいでもあると分かったところで、明日から求人が増えるわけでも、失った十数年が戻るわけでもない。そこはどうにもならない。

ただ、夜中に「自分が弱かっただけだ」とぐるぐるする時間が、少しだけ短くなった。「まあ、入り口の運も相当悪かったしな」で済ませられるようになったというだけ。

それは前進ではないけど、自分を削る手を一回止めるにはなった。引きこもりの夜には、それで十分なこともある。

まとめのようなもの

自分なりに整理しておくと、

  • 引きこもりは推計146万人、うち40〜64歳が約61.3万人と、いい年の大人が多い
  • 国も、就職氷河期世代を支援する施策の中に、ひきこもり支援を組み込んでいる
  • 生まれ年だけで就職の難易度が跳ね上がった世代が、まとまって統計に現れている
  • だから「100%自分のせい」は、たぶん見積もりすぎ
  • 「だから抜け出せ」じゃなく、「だから少し自分を責めなくていい」で止めていい

これも、当時の自分に見せても「でも結局やれなかったのは自分だろ」と返してきた気はする。

ただ、生まれ年だけで入り口の難易度が変わっていた、という事実を一個知っておくだけで、「全部自分のせい」と頭を下げる手前で、ほんの一拍だけ立ち止まれるようになる。当時の自分に効いたかは分からないけど、効く人もいると思って、置いておく。


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