知りたいこと

引きこもりの昼夜逆転は治すべき?元当事者が「治さずに」整えたことと、国の睡眠ガイドの要点

先に言うと

  • 自分は昼夜逆転を「治して」いない。昼に起きて夜中に寝る生活を数年続けていて、それで生活は回っている
  • 国の睡眠ガイドが勧めているのは、主に「起きたら光を浴びる(ガイドの言葉では朝日)」「起きる時間を大きくずらさない」「十分な睡眠時間をとる」こと。何時に寝起きするかを決める話ではない、と自分は読んだ
  • 眠れない、寝ても休んだ感じがしない、日中の眠気がつらい、が続いて生活に響いているなら、ガイドは医師への相談を勧めている

「昼夜逆転 治し方」と検索すると、朝日を浴びろ、早起きしろ、という記事がたくさん出てくる。それができないから困っている、という人も多いと思う。

その「治し方」は、ここには書かない。自分は昼夜逆転を治していないからだ。代わりに、治さないまま整えたことと、国の睡眠ガイドが実際に何を勧めているかを書く。

引きこもると、なぜ昼夜逆転しやすいのか

愛知県の精神保健福祉センターのページは、ひきこもりに見られる状態の一つとして「昼夜逆転の生活」を挙げて、こう説明している(要約)。

  • 朝から昼にかけて太陽の光を浴びないと、体のリズムが崩れやすい
  • 人の体内時計は、もともと25時間程度の周期と言われていて、時間を気にしない生活を続けると昼夜逆転になりやすい
  • 昼は世間に取り残されるような不安や焦りでつらくなり、みんなが寝ている夜は楽に過ごせることがある
  • 生活リズムだけを整えようとしても、本質的な解決には結びつかない

出典:愛知県「ひきこもりにみられる症状と対応」(「昼夜逆転の生活を送る」の項)

三つ目は、自分にもそのまま当てはまる。平日の昼は、外の音が全部「世界は動いてる、お前だけが止まってる」に聞こえた。夜は世間も家に帰っていて、世界全体が自分と同じぐらいの速度で動いているように感じた。

昼夜逆転は、治さないといけないのか

自分の答えは、「困っていないなら、治さなくていいと思う」だ。

ただし、ここで言う「困っていない」は、眠れない、寝ても休めた感じがしない、日中の眠気がつらい、といったことがない、という意味だ。それが続いて生活に響いているなら、時間の問題とは別に、医師に相談した方がいい(下の「医師に相談した方がいいのは、どんなときか」にガイドの目安をまとめた)。

自分は今も、昼の12時ごろに起きて、夕方から作業して、夜中の3時ごろに寝る生活を数年続けている。これで生活は回っている。朝型に矯正する必要は、なかった。

自分の中では、世間の朝(6時〜9時)と自分の朝(12時〜15時)は、別の時計で動いている。世間の朝は、出勤と通学のための時間だ。そのどちらにも参加していないなら、同じ時間に起きる理由は、もともとない。

ここで一つ、分けて考えたほうがいいことがある。「時間がずれていること」と「時間がバラバラなこと」は、別だった。

自分にも、カーテンを閉め切って、起きる時間も寝る時間も食べる時間もバラバラだった時期がある。15時に昼食を食べて、夜中3時に朝食を食べるような生活だった。今の「昼に起きて、夕方から作業して、夜中に寝る」は、それとは違う。世間とはずれているけど、自分の時計として回っている。

ガイドが体内時計の混乱(社会的時差ボケ)として書いているのも、休日の寝だめで起きる時刻が大きく遅れること、つまり起きる時刻が日によって大きく動くことだった。だから、目指すなら「朝型に戻す」より、「自分の時計を、だいたい毎日同じにする」の方がガイドの話に近いと思う。ここは自分の読み方で、ガイドがそう書いているわけではない。

朝に起きられない罪悪感そのものについては、別の記事にまとめた → 引きこもりの罪悪感がつらい。甘えなのか?元当事者が罪悪感を減らせたこと

カゲの場合:治さずに続けたこと

起きる時間ではなく、起きてからの2時間を決めた

自分が変えたのは、「何時に起きるか」ではなく「起きてから最初の2時間をどう使うか」だった。朝型でも夜型でも、起きた直後の2時間が、その日の体調を決めると思っている。

  • 起きたら、まず水を飲む
  • 5分だけ、カーテンを開ける
  • 何か軽いものを食べる
  • スマホは、起きて1時間は触らない

これを、昼12時に起きても、昼3時に起きても、起きた時間を基準にやる。世間の朝にやることではなく、自分の朝にやること。そう切り離して考えた。

国の睡眠ガイドが勧めている「起きたら光を浴びる」「朝食をとる」と並べてみると、時間がずれているだけで、中身はかなり近い。ただ、ガイドが書いているのは朝日の光で、昼に起きてから浴びる光で同じ効果があるかまでは書かれていない。

カーテンは、レースだけ開けた

閉め切った部屋は、時間が止まる。外の光が入らないと、自分の生活リズムと社会のリズムの落差が見えなくなって、罪悪感も少し薄くなる。数か月、昼も夜も閉めっぱなしだった時期がある。

でも、カーテンを全開にするのは無理だった。そこで見つけた妥協点が、厚手のカーテンは閉めて、レースカーテンだけ開けておくことだった。外からは部屋の中がほぼ見えなくて、光だけが入ってくる。

光が入る部屋と入らない部屋では、同じ引きこもりをやっていても、体の重さが違った。光がない部屋は、起きても夜みたいで体が重い。光が入る部屋は、昼は昼っぽくて、気分が少しマシだった。

今でも、気分によってはカーテンを閉め切って過ごす日がある。開ける日を増やすのが目標ではなく、開けたい日にストレスなく開けられる、くらいでいいと思っている。

不安が来る時間に、小さな作業を入れた

将来の不安で眠れず、寝返りを打って、スマホを見る。気付いたら4時。朝になって寝落ちして、起きたら昼すぎ。生活リズムが崩れて、さらに不安になる。このループがあった。

効いたのは、不安が来やすい時間帯(自分の場合は夜10時から12時ぐらい)に、ポイ活のアンケートのような、頭を使わない小さな作業を入れることだった。10〜20分の作業で、不安のループが30分ぐらい止まる。そうすると、寝られる確率が上がった。

夜中に布団の中でSNSを開いて、元同級生の近況を見てしまう夜もあった。そういう夜の翌日は、気分が確実に底になる。指が動きそうになったら、スマホを手の届かないところに置く。それだけで、だいぶ変わった。

効かなかったこと

  • 「朝6時に起きていたら」と、朝起きられる幻の自分と比べること。 比べても現実の自分を殴るだけで、朝起きられる自分を引き寄せる効果はなかった
  • 眠れない夜に、スマホに逃げること。 スマホを見ていても、不安はバックグラウンドで動き続けていた

国の睡眠ガイドは、何を勧めているか

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」から、昼夜逆転に関係しそうなところを抜き出すと、こうなる。

  • 大人は、6時間以上を目安に眠る(おおよそ6〜8時間。1時間くらい長くても範囲に入る)
  • 起きたら朝日の強い光を浴びる。体内時計がリセットされる
  • 休日の寝だめで起きる時刻が大きく遅れると、時差ボケのような状態になる
  • 寝室にスマホを持ち込まず、できるだけ暗くして寝る
  • 朝食をとり、寝る直前の夜食は控える
  • 眠くないのに無理に寝ようとせず、眠気が来てから布団に入る

出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

ガイドの立場は、もちろん「朝に光を浴びる」側だ。ただ、何時に起きるべきかを一律に決めているわけではなかった。ガイド自身も、睡眠には個人差があり、全ての人に当てはまるとは限らない、と書いている。

また、同じ愛知県のページは、朝型に戻したいと思ったときには、朝日を浴びる、日中体を動かす、決まった時間に起きる、などの方法が「役立つかもしれない」として、少しずつリズムを取り戻せるといい、と書いている。戻すかどうかを決めるのは本人、という書き方だと自分は読んだ。

医師に相談した方がいいのは、どんなときか

自分は医師ではないので、当てはまるかどうかの判断はできない。ガイドに書いてある目安はこうだ。

  • 眠れない、眠っても休んだ感じがしない、日中の眠気や居眠り、が続いて生活に響いているときは、早めに医師に相談する
  • 生活を見直しても良くならないときも、医師に相談する。うつ病などで、睡眠が短くなったり長くなったりすることもある
  • 極端な遅寝・遅起きで社会生活に支障が出る睡眠障害(睡眠・覚醒相後退障害)もある。明け方に寝て夕方近くに起きるような場合は、寝る前の明け方の光を避けるよう書かれている

出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

自分が読んだ限り、ガイドが相談を勧めているのは「時間がずれていること」そのものではなく、「眠れない・休めない・眠気がとれない」が続いて生活に響いているときだった。

病院に行くこと自体がしんどいときに、まず話を聞いてもらえる場所として、ひきこもり地域支援センターがある。睡眠の診察をする場所ではないが、相談は本人からでも、家族やきょうだいからでもできる。

→ ひきこもり地域支援センターとは?電話できない人のための、相談の中身と窓口の探し方

今日・今夜できること

  1. 今日起きた時間を、今日の朝と呼ぶ。 何時でもいい
  2. 起きたら、水を一杯飲んで、5分だけカーテンを開ける。 全開が無理なら、レースだけでいい
  3. 明日も、今日と同じくらいの時間に起きてみる。 早くしなくていい。ずらさない方を先にする
  4. 寝る前は、スマホを手の届かないところに置く。 置けない夜は、頭を使わない作業を10分だけやってみる

よくある疑問

昼夜逆転を、朝型に戻す方法は?

戻したいと思ったなら、ガイドと愛知県のページに書いてある方向は共通している。起きたら光を浴びる、日中に体を動かす、決まった時間に起きる、夜は暗くして画面の光を避ける。愛知県のページは「少しずつ」と書いている。自分は戻していないので、戻すコツを体験として書くことはできない。

ずっと寝てしまう。寝すぎは問題?

ガイドでは、大人の睡眠時間はおおよそ6〜8時間で、1時間くらい長くても範囲に入る、とされている。10時間を超える睡眠が必要な人もいる、とも書かれている。一方で、眠っても休んだ感じがしない、日中の眠気がとれない、が続くなら、医師への相談を勧めている。寝すぎについては、自分の体験として書けることがない。

昼夜逆転のままで、働けるの?

自分は、昼に起きて、夕方から作業して、夜中に寝る生活で回っている。在宅のクラウドソーシングやブログのように、納期さえ守れば何時に起きても何時に寝ても文句を言われない仕事はある。引きこもりから抜け出したきっかけについては、こっちにまとめた → 引きこもりを抜け出すきっかけは?元当事者が「外に出る前」に効いたこと

家族に「生活リズムを直せ」と言われる

愛知県のページにも、生活リズムだけを整えようとしても本質的な解決には結びつかない、とある。人との会話や日中の活動が増えれば、生活リズムも自然に改善していく、という書き方だ。リズムを直すことが先、ではないのかもしれない。

まとめ

  • 引きこもると、光を浴びない・時間を気にしない・昼がつらい、が重なって昼夜逆転しやすい(愛知県のページ)
  • 国の睡眠ガイドの柱は、6時間以上を目安に眠る、起きたら光を浴びる、起きる時間を大きく動かさない、夜は暗くする、あたり
  • 自分は昼夜逆転を治していない。昼12時ごろに起きて夜中3時ごろに寝る生活を数年続けていて、それで回っている
  • 「ずれている」と「バラバラ」は別。ガイドが体内時計の混乱として書いているのは、休日の寝だめなどで起きる時刻が大きく動くこと
  • 続けたのは、起きてからの2時間(水・カーテン・軽い食事・スマホを触らない)と、レースカーテン、寝る前にスマホを遠ざけること
  • 眠れない・休めない・日中の眠気が続いて生活に響いているなら、ガイドは医師への相談を勧めている

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