引きこもりでゴミ出しが怖い。元当事者が近所の目と分別の不安を減らした方法
先に言うと
- 自分にとってゴミ出しは、コンビニより重い定例行事だった。コンビニは行かなくて済むけど、ゴミは出さないと溜まっていく
- 怖さの中身は、近所の人とのあいさつと、分別を間違えて目立つことだった。治すより、負担を減らす工夫で回した
- 出す時間や夜に出していいかは、自治体や集積所ごとに決まっている。ずらすなら、そのルールの中でずらす
引きこもっていた頃、自分にとってゴミ出しは、週に何回も、決まった曜日の朝に来る小さな戦場だった。この記事は、ゴミ出しの怖さを克服した話ではない。怖いまま、どうやって回していたかの話だ。
ゴミ出しは「出さない」を選べない
外出は、無理なら諦められる。コンビニも、無理なら行かなくていい。でもゴミ出しは、出さないと家の中にゴミが溜まっていく。
自分の地域では、出す日がこう決まっていた。
| ゴミの種類 | 回数 |
|---|---|
| 燃えるゴミ | 週2回 |
| 資源ゴミ | 週1回 |
| プラスチック | 週1回 |
出典:カゲの体感(ゴミ出しが、恐怖だった朝より)
週に3〜4回、決まった曜日の朝に、家の外に出なきゃいけない。しかもその時間は、近所の人がちょうど動き出している。自分には、これがコンビニより重い定例行事だった。
ゴミ出しの怖さは、二つに分かれていた
「ゴミ出しが怖い」と一言で言っても、自分の場合、中身は大きく二つだった。
- 近所の人と会うこと:すれ違って、あいさつしなきゃいけない瞬間
- 分別を間違えて目立つこと:注意されたり、袋を置いていかれたりする想像
近所の人と会うこと
朝7〜8時ごろは、犬の散歩、通勤、通学、ほかのゴミ出しで、近所の人が動いている。ゴミ置き場までの短い道で、誰かとすれ違うかもしれない。近所のおばさん、同級生の親、郵便配達の人。
一番しんどかったのは、「おはようございます」と言わなきゃいけない瞬間だった。たった5文字だ。言えないというより、言ったあとの相手の表情や、そのあとの沈黙が怖かった。
分別を間違えて目立つこと
地味に重かったのが、分別を間違えることへの恐怖だった。
- 瓶に「違います」のシールが貼られて、置いていかれる
- ゴミ当番の人に呼び止められる
- 町内会の掲示板に書かれる(かもしれない)
どれも、起きる確率は低い。実際には、少し間違えてもシールが貼られるくらいで、それすら大したことではない。
でも当時の頭は、「ゴミ出しで目立つ=地域で知られる=世界が終わる」というところまで飛んだ。飛躍している自覚はあったけど、止まらなかった。
出す時間のルールは、地域ごとに違う
ゴミを出す時間は、自分で好きに決められるものではない。
たとえば東京都大田区と横浜市は、収集日当日の朝8時までに出すよう案内している。大田区は、夜のごみ出しは控えるよう求めている。横浜市は、出す時間などの細かいルールは集積所ごとに地域で決めている、としている。
出典:大田区「資源とごみの収集日」、横浜市「よくある質問」
締め切りの時間も、夜に出していいかどうかも、自治体や集積所によって違う。自分の地域のルールは、自治体のサイトのごみの出し方のページや、集積所の看板で確かめられる。人に聞かなくても調べられるのは、少しありがたい。
自分がやっていた工夫
どれも、ゴミ出しの怖さを治す方法ではない。負担を減らす方法だ。
時間をずらす
実家にいた頃は、出す時間を7時から8時半にずらして、通勤のピークを外していた。
ただ、上で書いたとおり、8時までに出すよう決めている地域もある。ずらすなら、自分の地域の締め切りの中で、人の少ない時間を探すことになる。
袋を小さくする、顔を隠す
大きい袋は目立つので、小さい袋で毎回出すようにした。冬はマスク、フード、帽子で、誰が出しているのか分かりにくくした。
重い日だけ、親に代わってもらう
自分の部屋のゴミくらいは自分で、というのが、自分の中の最低ラインだった。それでも、どうしても無理な日は親に代わってもらった。毎回じゃなくていい。重い日だけでいい。
段ボールを家に持ち込まない
ゴミ出しで意外と重かったのが、通販の段ボールだった。資源ゴミの日は週1回、自治体によっては月2回なので、段ボールは最低でも数日、部屋にある。自分は部屋に持ち込んで畳んで積んでいた。積まれた段ボールを見るたびに、「親の金で何をやってるんだろう」という声がうっすら浮かんだ。
途中から、コンビニ受取や営業所受取を使うようにした。コンビニで受け取った小さいものは、店員に断ってから店内で開けて、段ボールは店のゴミ箱に置いてきたこともある。家に持ち帰るのは中身だけ。それだけで、家の空気が変わった。
深夜に出していた時期のこと
一番ひどい時期は、深夜2時や3時に、こっそりゴミを出しに行っていた。誰もいないし、「おはよう」を言う必要もない。当時の自分には、完全に安全な時間だった。
ただ、深夜のゴミ出しは、本来はルール違反だ。大田区のように、夜間のごみ出しを控えるよう求めている自治体もある。大田区が理由に挙げているとおり、朝の収集までの間に動物にゴミを荒らされることもある。だから、人にすすめる方法ではない。
当時の自分には、それしか選択肢がなかった。それも本当だ。もし今、深夜にしか出せない状態なら、それを責めるより、朝に出せる形をどう作るかを考える方がいいと思う。親に頼める日を作る、人の少ない時間を締め切りの中で探す、次に書く住まいの条件を考える、などだ。
一人暮らしでは、建物の中にゴミ置き場がある物件を選んだ
ゴミ出しの怖さがいちばん減ったのは、一人暮らしを始めたときだった。
物件を選ぶ基準の一つに、「建物の中にゴミ置き場があって、24時間出せる」を入れた。これがあると、
- 時間を気にせず出せる
- 建物から一歩も外に出ない
- 誰にも会わない
ゴミ出しが、「外に出る行為」ではなくなった。これだけで、生活のストレスがごそっと減った。
引きこもりのまま一人暮らしを考えている人がいたら、この条件は優先度を上げていいと、自分は思っている。
カゲの場合
- 週3〜4回、朝に外に出なきゃいけないゴミ出しは、コンビニより重い定例行事だった。いちばん怖かったのは「おはようございます」を言ったあとの相手の表情と沈黙だった(ゴミ出しが、恐怖だった朝)
- 分別を間違えて目立つことも怖かった。起きる確率は低いと分かっていても、想像が止まらなかった(ゴミ出しが、恐怖だった朝)
- 実家では、時間をずらす、袋を小さくする、冬はマスクやフードで顔を隠す、重い日は親に代わってもらう、で回していた(ゴミ出しが、恐怖だった朝)
- 通販の段ボールが部屋に積まれていくのがつらくて、コンビニ受取に切り替えた(通販の段ボールを、家族に見られたくなかった)
- レースカーテンだけ開けて部屋に光を入れるようになってから、掃除する気が起きるようになった(平日の昼に、カーテンを開けられなかった)
- 「今週は、ゴミ袋を出せた」「今月は、部屋を一度掃除した」を、できたことに数えた。他人から見たら大したことじゃない。でも、「何もできない」という声に言い返せる事実になった(「何もできない自分」が、溶けた瞬間)
- 今でも、ゴミ出しの日は少し身構える。建物の中にゴミ置き場があって、誰とも会わないと分かっていても、「出すタスクがある」こと自体が気になる(ゴミ出しが、恐怖だった朝)
今日できること
- 自分の地域のゴミの出し方を、一度だけ調べてみる。 自治体のサイトの、ごみの出し方のページを見てみる。締め切りの時間と、収集日だけ分かればいい
- 怖さが「人と会うこと」なのか「分別」なのか、どちらが重いかだけ考えてみる。 分別なら、出し方のページを見ながら袋に入れれば、目立つ心配は減らせる
- 次の収集日に出せなくてもいい。 一回出しそびれても、次の収集日がある。自分の部屋のゴミを、一回分足踏みさせていい
- 出せた日は、出せたと数える。 今日はそこで止めていい
よくある疑問
深夜や前の晩に出してはだめ?
地域のルール次第だ。大田区は収集日当日の朝8時までに出すよう案内していて、夜間のごみ出しは控えるよう求めている。横浜市も、当日の朝8時までが基本だ。自分も深夜に出していた時期があるけれど、すすめる方法ではない。自分の地域の決まりは、自治体のサイトや集積所の看板で確かめられる。
分別が分からなくて、出すのが怖い
自分も、分別を間違えて目立つのが怖かった。実際には、少し間違えてもシールが貼られるくらいで、それすら大したことではない。不安なら、自治体のごみの出し方のページを見ながら袋に入れると、人に聞かずに確かめられる。
ゴミ出しを手伝ってくれる制度はある?
自治体によっては、「ふれあい収集」などの名前で、ゴミ出しが難しい世帯を対象にしたごみ出し支援の制度がある。環境省の手引きによると、2021年の時点で、全国の自治体の3分の1ほどが導入していた。
出典:環境省「高齢者ごみ出し支援制度導入の手引き(概要版)」
ただし、名前のとおり高齢者向けとして作られている制度で、誰が使えるか(年齢、世帯の構成、要支援・要介護の認定など)は、自治体ごとに決める仕組みになっている。引きこもりの人を対象に作られた制度ではない。自分は使ったことがないので、使えるかどうかは、住んでいる自治体の案内で確かめるしかない。
ゴミが部屋に溜まって、自分ではもう手がつけられない
その状態から抜けた経験は、自分には書けない。
ただ、一人で抱えなくていいと思う。ひきこもり地域支援センターには、メールやSNSで相談を受けている窓口もある(どこまで対応しているかは窓口による)。窓口の探し方はこっちにまとめた → ひきこもり地域支援センターとは?電話できない人のための、相談の中身と窓口の探し方
ゴミ出しの怖さは、いつか消える?
自分は、消えていない。今でもゴミ出しの日は少し身構える。でも、完全に治らなくても、生活は回った。誰とも会わない時間や住まいを選ぶ。親に頼む日を作る。自分の場合は、それで回せた。外に出る怖さ全体の話はこっちに書いた → 引きこもりで外に出るのが怖い。元当事者が怖さを中身ごとに分けて、怖いまま出られた方法
まとめ
- ゴミ出しは「出さない」を選べないので、自分にはコンビニより重い定例行事だった
- 怖さの中身は、近所の人とのあいさつと、分別を間違えて目立つことだった
- 出す時間や夜に出していいかは、自治体や集積所ごとに違う。大田区や横浜市は、収集日当日の朝8時までが基本
- 時間をずらす、袋を小さくする、顔を隠す、重い日は親に頼む、段ボールを家に持ち込まない。治すのではなく、負担を減らす工夫で回した
- 一人暮らしでは、建物の中に24時間出せるゴミ置き場がある物件を選んで、ストレスがごそっと減った
- 自治体のごみ出し支援は、高齢者向けが中心で、対象は自治体ごとに違う
関連する話: