引きこもりを抜け出すきっかけは?元当事者が「外に出る前」に効いたこと
先に言うと
- 自分の場合、抜け出すきっかけは「外に出たこと」ではなかった
- 先に効いたのは、家の中で少しお金を作る、外に出なくて済む手段をそろえる、自分を責めるのをやめる、の3つ
- 外に出られる日が増えたのは、そのあとだった
「抜け出すには、まず外に出よう」「人と会ってみよう」という助言は多い。でも、それができないから困っている。外に出る前の段階で、自分に効いたことを書く。
「抜け出す」は、外に出ることとは限らない
最初に、言葉をそろえておきたい。
「引きこもりを抜け出す」と聞くと、毎日外に出る、働きに出る、人と普通に話せる、みたいな姿を思い浮かべやすい。でも、そこをゴールにすると、ほとんどの人にとって遠すぎる。
自分が実際に抜けたと思えたのは、こういう変化だった。
- 親に頭を下げずに、自分のものを買えるようになった
- 「働け」と言われる回数が減った
- コンビニに、怖いまま入れる日が出てきた
- 自分を責めて眠れない夜が減った
今でも、知らない人が多い場所には行かないし、電話も苦手なまま。それでも、あの頃の苦しさからは抜けた、と自分では思っている。
「普通に戻る」ではなく、「今の苦しさが少し減る」。このくらいの意味で読んでもらえると、この先の話が使いやすいと思う。
よく挙げられる「抜け出すきっかけ」
支援団体の記事を見ると、抜け出すきっかけとしては、だいたい次のようなものが挙げられている。
- 病院や支援機関を利用したこと
- 定期的に通える場所ができたこと
- 信頼できる人に出会えたこと
- 自分に合う環境に出会えたこと
どれも本当だと思う。ただ、どれも「外に出て、誰かに会う」が前提になっている。外に出ること自体が無理な時期には、ここから始めるのは難しい。
自分に効いたのは、その手前の段階のことだった。
自分に効いたきっかけ
1. 自分のお金を、少しだけ作れた
いちばん大きかったのは、これだった。
引きこもっていると、いつのまにか小遣いがなくなる。歯磨き粉が切れても、髪が伸びても、親に言わないと何も買えない。この「何をするにも頭を下げる」状態が、思っていたより心を削っていた。
そこから抜け始めたのは、ポイ活で月3,000円とか5,000円とか、小遣いくらいのお金を自分で引いてこられるようになってからだった。金額は小さい。それでも、「自分で作ったお金で、自分のものを買える」と、気持ちの置き場所が変わった。
2. 「普通じゃない」と、自分で認めた
「普通に働けない」「普通に人と話せない」。ずっと、普通になるにはどうすればいいかを考えていた。
楽になったのは、「普通じゃない」と自分で認めた瞬間だった。問いが「どうやって普通になるか」から「普通じゃないまま、どう生きるか」に変わった。そこから、できることを探す方に頭が向いた。
3. 外に出なくていい手段を、先にそろえた
コンビニが怖かった時期、世の中の助言は「少しずつ外に出てみよう」だった。でも、自分に効いたのは逆で、外に出なくて済む手段を先にそろえることだった。
セルフレジ、深夜の空いている時間、ネット通販。怖いところを避ける通り道が増えるほど、「行けなかった」と自分を責める回数が減った。責める回数が減ったぶん、次に行くハードルが下がっていった。
4. 親の「働け」が減った
ポイ活や在宅の作業で少し稼げるようになると、親がなんとなく察し始めた。金額を伝えたわけではない。家の中で作業している時間が増えて、親の財布から日用品をもらう回数が減った。その変化を、親は見ていた。
そのあたりから、「働け」と言われる回数がはっきり減った。言われる回数が減ると、家の中の空気が少し軽くなる。軽くなると、動く余裕が出てくる。
5. 地元を離れた
これは、引きこもりから半引きこもりに抜けるあたりの時期の話。
地元にいると、コンビニでもスーパーでも、知っている顔に会うかもしれない。地元を離れたら、その恐怖がほぼなくなった。自分の回復にいちばん効いた要素のひとつだったと、今でも思っている。
ただ、これはお金も体力も要るので、誰にでもすすめられる方法ではない。
効かなかったこと
逆に、やってみて効かなかったこともある。
- 自分を責める量を増やすこと。 「このままじゃ駄目だ」と自分を追い込めば動けると思っていた。でも、責める量を増やしても、抜ける力にはまったくならなかった。むしろ動けなくなった
- 「いつまでに抜ける」と期限を決めること。 期限が近づくたびに「間に合わない」という絶望が増えただけだった(引きこもりは何年で手遅れ?)
- いきなり「働く」を目標にすること。 目標が遠すぎて、考えるたびに固まった
話さずに使える相談先もある
「誰かに相談しよう」と言われても、電話も対面も無理、という人は多いと思う。自分もそうだった。
内閣府の2022年度の調査で、引きこもり状態にある15〜39歳の人に「相談先に求めること」を聞いている。「相手が同じ悩みを持っている、持っていたことがある」が約37%で一番多く、「匿名で相談できる」「SNSやメールなどで相談できる」も3割近くあった。
出典:内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」
「同じ経験をした人に聞いてほしい」「名前を出さずに相談したい」「文字で相談したい」と思っている人は、少なくない。
各地の「ひきこもり地域支援センター」は、全都道府県と政令指定都市にあって、年齢などの条件を問わずに相談できる。窓口によっては、メールで相談を受け付けているところもある。厚生労働省の「ひきこもりVOICE STATION」に、全国の窓口がまとまっている。
今すぐ使わなくていい。場所だけ知っておけば、必要になったときに思い出せる。
「抜け出したい」と思った夜に、やっていいこと
最後に、今夜できるくらいの小さいことを並べておく。
- 今夜は、調べたところで終わりにしていい。 一晩で何かを決めなくていい
- 外に出る方法より先に、外に出なくて済む方法を探す。 ネット通販、セルフレジ、空いている時間帯
- 話さずにできるお金の手段を、ひとつだけ調べてみる。 自分の場合はポイ活だった(ポイ活って危ないのか、ニートのポイ活の現実的な月収)
- カーテンを少しだけ開ける。 外に出なくていい。部屋の空気を少し動かすだけでいい(平日の昼に、カーテンを開けられなかった)
よくある疑問
外に出るのが怖いままでも、抜け出せる?
自分の場合は、怖いままだった。怖くなくなってから外に出たのではなく、怖いまま、空いている時間や人と話さなくていい手段を使って、少しずつ出られる日が増えていった。
抜け出すのに、何年くらいかかる?
決まった年数はない。国の調査では、7年以上続いている人も2割を超えている。詳しくはこっちにまとめた → 引きこもりは何年で手遅れ?期間の実データ
何もやる気が起きない。それでもできることはある?
やる気が出るのを待たなくていい、というのが自分の考え。自分に効いたのは、励ましより、小さな「できた」を一個でも作ることだった。小さければ小さいほど効いた(「何もできない自分」が、溶けた瞬間)
まとめ
- 「抜け出す」は、外に出ることや働くこととは限らない。今の苦しさが少し減ることから始まる
- よく挙げられるきっかけ(支援機関、通う場所、人との出会い)は、外に出られることが前提のものが多い
- 自分の場合は、外に出る前に「自分のお金を少し作る」「外に出なくていい手段をそろえる」「普通じゃないと認める」が効いた
- 自分を責める量を増やしても、期限を決めても、抜ける力にはならなかった
- 匿名やメールで相談したい人は少なくない。話さずに使える窓口もある
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