引きこもりの履歴書、空白期間はどう書く?元当事者が実際に書いた一行と、履歴書のいらない道
先に言うと
- 自分は、引きこもっていた期間を「個人事業主として在宅で活動」と一行で書いた。嘘ではない範囲で、書くことは最小限にした
- それより先に、履歴書のいらない稼ぎ方から始めた。空白を埋めるより、空白を問われない場所を選ぶ方が、自分には楽だった
- 空白期間の書き方に、誰にでも当てはまる正解の型があるとは思っていない。一人で決められないなら、ハローワークやサポステで書類を見てもらう方法もある
履歴書の学歴欄を書き終えて、その下で手が止まる。卒業した年から今まで、数年、あるいは10年以上、書くことが何もない。
自分も、そこで止まった側だった。空白期間の「うまい言い換え例文集」は、ここにはない。自分が実際に書いた一行と、国が企業に求めている採用のルール、それに、履歴書を通らずに済んだ道を書く。
自分が書いた一行
採用する側がどう受け取るかの答えは、自分は持っていない。自分がやったことを書く。
「空白」を「活動期間」と書き直した
ポイ活と在宅の簡単な仕事を始めてから、自分は空白期間をこう書けるようになった。
- 「2015〜2023:個人事業主として在宅で各種オンラインワーク」
嘘ではない。ポイ活と在宅の仕事と、アフィリエイトの練習をずっとやっていた。金額は少なくても、「活動」ではあった。
この一行を書けるようになってから、履歴書を前にしたときの重さが、だいぶ減った。空白ではなかった、活動していた、と自分で決めたことで、履歴書より先に、自分の見方の方が変わった。
よく使われる埋め方
空白期間の悩みは、引きこもりに限らない。病気、介護、浪人、就活の失敗でも同じ形になる。だから、埋め方にはよく使われる形がいくつかある。
- 療養・静養:健康上の理由で療養していた場合
- 家事手伝い:家の手伝いや家族の介護をしていた場合
- 自己研鑽:資格の勉強や独学をしていた場合
- 個人事業:ポイ活や小さな在宅の仕事をしていた場合
大事なのは、自分に当てはまるものだけを使うことだと思う。やっていない活動を書くと、面接で中身を聞かれたときに困るのは自分だ。
書かなくていいと、自分は思ったこと
引きこもっていたこと、心の病気のこと、家族と不仲だったこと。自分は、こういうことまで履歴書に書く必要はないと思っている。
正直に全部書くのは、誠実に見えて、実際には仕事と関係ない情報を相手に渡すことになる。自分の場合は、嘘をつかない範囲で、最小限の情報で書く、という線を引いた。
ただ、病気や障害のことは、働き方の配慮と関わることもある。そこをどこまで伝えるかは、自分には決められない話なので、迷ったら下の相談先で聞いてみてほしい。
履歴書がいらない道もあった
もう一つ、自分にとって大きかったのは、そもそも履歴書を出さない道を知ったことだった。
最初にやったポイ活は、履歴書もいらないし、面接もないし、年齢で弾かれることもなかった。家の中で、誰とも話さずに始められた。
クラウドソーシングも、アカウントを作って案件に応募し、納品する形なので、履歴書を出す場面がない。ただ、自分は引きこもりのど真ん中にいた頃は続かなかった。発注者とのやりとりが思ったより重く、納期もきつかった。回復期に入ってからなら、何件かできた。
履歴書が重く感じるのは、ゴールを「正社員として採用されること」に置いているからだ、と自分は思っている。履歴書のいらない道を選べば、空白は書類で見せる必要のない、ただの時間に戻る。
検索して出てくる「空白期間の書き方」
「履歴書 空白期間」で検索すると、上に並ぶのは転職サイトや就職支援会社の記事が多い。中身はだいたい似ていて、「嘘はつかない」「理由は簡潔に」「その期間に得たことや、働く意欲を伝える」といったことが書いてある。
ただ、そこに出てくる例は、転職活動が長引いた、病気の療養、資格の勉強、介護といった「説明しやすい空白」が中心だ。自分が見た範囲では、引きこもりの空白はQ&Aで少し触れられる程度で、正面からは扱われていなかった。
「得たこと」や「意欲」を書くように言われても、書けることがないから手が止まっている。そういう人もいると思う。
国が企業に求めている、採用選考のルール
書き方の前に、知っておいて損はなかったと思うことがある。厚生労働省は、企業に向けて「公正な採用選考」を求めている。
採用選考は、応募者の適性・能力で判断すること。そのうえで、適性・能力と関係のない事項を、応募書類に書かせたり面接で尋ねたりするのは、就職差別につながるおそれがある、としている。例として挙がっているのは、こういうものだ。
- 家族に関すること(職業・健康・病歴・収入など)、住宅状況、家庭環境
- 宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、愛読書など
出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
「引きこもっていたこと」そのものが、この一覧に名前で載っているわけではない。だから、空白期間について聞かれること自体がおかしい、とまでは言えない。ただ、家族の状況や家の事情は、そもそも企業が把握しないよう求められている側に入っている。
自分は、履歴書は自分の全部を開示する書類ではないと思っている。国のルールの側から見ても、少なくとも家族や家の事情まで差し出す書類ではない。
一人で書けないとき、書類を見てもらえる場所
それでも会社に応募したいとき、履歴書を一人で書くのはきつい。公的な窓口で、書類や面接の準備を手伝ってもらうこともできる。
- ハローワーク:希望すれば、履歴書・職務経歴書の添削や、模擬面接をしてもらえる
- 地域若者サポートステーション(サポステ):仕事や学校に行っていない15〜49歳が対象で、相談は無料。履歴書の書き方や面接の受け答えを教えてもらえる
出典:ハローワークインターネットサービス「初めてご利用になる方へ」、サポステ公式サイト「サポステとは」
サポステの公式サイトには、最初の予約は「お電話またはメールで」とある。電話が無理でも、予約の連絡はメールでできる。電話での相談もできるとしたうえで、「できれば直接お会いして聞かせてほしい」とも書かれている。
家から出られなかった頃の自分には、サポステは早すぎると感じて、使わなかった。外に出られるようになってから思い出す、くらいの距離でいいと思う。
就労に限らず、引きこもりのこと全般を相談できる窓口もある(ひきこもり地域支援センターとは?)。
カゲの場合
- 履歴書を書こうとしたら、学歴と今の間に真っ白な期間があった。それを書類に晒すと、自分という人間が「空白そのもの」になる感じがした(履歴書の空白期間を、埋めなくていい説)
- ポイ活と在宅の仕事を始めてから、空白期間を「個人事業主として在宅で活動」と書けるようになった。書けるようになって、履歴書を前にしたときの重さが減った(履歴書の空白期間を、埋めなくていい説)
- 最初の稼ぎはポイ活だった。履歴書も面接もいらず、年齢で弾かれることもなかった(引きこもりが、静かに歳を取っていく話)
- クラウドソーシングは、引きこもりのど真ん中では続かなかった。回復期に入ってから何件かやった(人と話さない、納期もない仕事の探し方)
- 「働いている=会社に勤めている」ではなく、「自力で何らかのお金を引いてきている」と定義し直した。それから、「働け」の刺さり方が目に見えて弱くなった(「働け」と言われるのが怖かった)
- 全部自分が悪いと思っていた頃、就職氷河期の話を知って、「100%自分のせい」は見積もりすぎだったかもしれない、と思えた(引きこもりは「時代のせい」でもある、と氷河期の話で思った)
今日できること
- 空白期間に自分がやっていたことを、小さいことでも書き出してみる。 履歴書に書くかどうかは、あとで決めればいい
- 書き出したものの中から、嘘にならないものだけに印をつける。 やっていないことは足さない
- 応募は、今日しなくていい。 履歴書を開いて閉じた日も、失敗ではない
- 履歴書のいらないお金の手段を、一つだけ調べてみる。 自分の場合はポイ活だった(ポイ活って危ないのか、何年か使った体感で書く)
今日はそこで止めていい。
よくある疑問
引きこもりだったと、正直に書くべき?
自分は、「引きこもり」という言葉ではなく、実際にやっていたこと(在宅で稼いでいたこと)を書いた。嘘をつかないことと、全部を書くことは別だと思っている。何を書くかは人によって違うので、迷うならハローワークやサポステで書類を一緒に見てもらうのも手だ。
空白期間に、本当に何もしていなかった
自分の場合は、ポイ活で少しずつお金を引いてきていたことを「活動」と数えるようにして、一行書けるようになった。「働いている」の定義を、自分で広げてみてもいいと思う(「働け」と言われるのが怖かった)
それでも書けることが見つからないなら、無理に作らなくていい。
面接で空白期間を聞かれたら、どう答える?
正直に言うと、自分は面接を通らない道を選んだので、答え方の正解は持っていない。ハローワークでは模擬面接を、サポステでは面接の受け答えの指導をしていると、それぞれの公式ページに書かれている。練習してから臨みたいなら、そういう場所を使う方法がある。
空白が10年以上ある。もう無理?
空白が長いほど、履歴書を出す道はしんどくなると思う。ただ、履歴書のいらない道なら、空白の年数を書類で見せる場面そのものがない。引きこもりの期間のデータはこっちにまとめた → 引きこもりは何年で手遅れ?期間の実データと、年数より先に見てほしいこと
家族のことや家の事情を聞かれたら?
厚生労働省は、家族に関すること(職業・健康・収入など)や生活環境・家庭環境を、応募書類や面接で把握しないよう企業に求めている。聞かれたときにどう対応するかまでは、自分には分からない。困ったら、ハローワークなどで相談してみてほしい。
まとめ
- 空白期間の書き方として検索で出てくるのは、転職サイトの「正直に・簡潔に・前向きに」が中心。自分が見た範囲では、引きこもりの空白は正面から扱われていなかった
- 厚生労働省は企業に、適性・能力で採否を決め、家族や家庭環境などは把握しないよう求めている。履歴書は自分の全部を差し出す書類ではない
- 自分は空白期間を「個人事業主として在宅で活動」と一行で書いた。嘘ではない範囲で、最小限にした
- それより先に、履歴書のいらないポイ活から始めた。空白を埋めるより、空白を問われない場所を選ぶ方が楽だった
- 一人で書けないなら、ハローワークやサポステで書類や面接の準備を手伝ってもらえる
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