引きこもりでバイトが怖い。応募も面接も無理だった元当事者が、先にやったこと
先に言うと
- 引きこもっていた頃の自分には、バイトは無理だった。面接が怖い、電話が無理、外に出るのが無理。怖いものが重なっていた
- でも、面接も電話も外出もいらない稼ぎ方なら、できた。自分はそこから始めた
- バイトは「働く」入口の一つでしかない。自分は、別の入口から入った
応募ボタンを押す手前で止まる。面接を想像しただけで疲れる。電話がかかってきたらどうしようと考えて、求人ページを閉じる。
この記事は、バイトの怖さを克服する話ではない。怖いまま、どこから始められたかの話だ。
自分も、バイトは無理だった
大学に行っていた頃は、バイト代で回していた。でも、引きこもってからは事情が違った。
親以外から千円を引っ張ってこられないか、ずっと考えていた時期がある。そのときの自分の条件は、こうだった。
- バイトは無理
- 面接が怖い
- 電話が無理
- 外に出るのが無理
この条件で「千円の出どころ」を探すと、本当に選択肢がなかった。
外出が減ったきっかけは「退職」がいちばん多い
内閣府の2022年度の調査で、引きこもり状態にある人に「外出頻度が低い状態になった最も大きな理由」を聞いている。年代を問わず、いちばん多かったのは「退職したこと」だった。15〜39歳では約15%、40〜69歳では4割を超えていた。
出典:内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」
仕事を辞めたことをきっかけに家にいるようになった人は、少なくない。そういう人が、もう一度働くのを怖いと感じても不思議ではないと思う。
もう一つ、国のガイドラインでは、引きこもりを「社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」と説明している。
出典:厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」
「就労」には、非常勤の仕事も含まれている。正社員にならないと働いたことにならない、という話ではない。
「バイトが怖い」は、一つの怖さじゃなかった
「バイトが怖い」と言うと、一つの大きな怖さに聞こえる。でも自分の場合、中身はいくつかに分かれていた。
- 面接:初対面の人に、自分を説明しなきゃいけない
- 履歴書:学歴と今の間に、何年も書くことがない
- 電話:応募や連絡で、いきなり声を出さなきゃいけない
- 外に出る:家を出て、決まった場所に通う
- 人と話す・納期:やりとりがあって、休むと誰かに迷惑がかかる
バイトは、これが全部いっぺんに来る。だから重かった。
でも、一つずつなら、避ける方法があった。ここからは、怖さごとに自分がどうしたかを書く。
怖さごとに、自分がしたこと
面接と履歴書:通らない道を選んだ
履歴書を書こうとすると、学歴と今の間に真っ白な期間がある。それを書類に晒すと、自分という人間が「空白そのもの」になる感じがした。
自分の場合、履歴書を直すより、履歴書のいらない道を選ぶ方が楽だった。最初にやったポイ活は、履歴書もいらないし、面接もないし、年齢で弾かれることもなかった。
ポイ活と在宅の仕事を始めてからは、履歴書の空白期間を「個人事業主として在宅で活動」と一言で書けるようになった。「空白ではない、活動していた」と自分で決めたら、履歴書より先に、自分の見方が変わった。
電話:「電話しません」を最初に言う
電話は、数年たった今でも怖い。それは変わっていない。
仕事を受けるときは、最初のやりとりの段階で「基本的にメールかチャットで対応します」と言うようにしていた。後から言うと「なんで?」となるけれど、最初に条件として出せば、それを飲んでくれる相手だけが残る。
電話がどうしても必要な仕事は、最初から受けなかった。電話恐怖を治すより、電話しなくていい環境に移る方が、ずっと早かった。
外に出る:出なくていい手段を先にそろえた
自分に効いたのは、外に出る練習ではなく、外に出なくていい手段を先にそろえることだった。ネットで買えるものはネットで買う。人と話さない仕事で、お金を引っ張ってくる。外に出る必要そのものを減らす。
外に出ずに稼ぐ方法にも、やさしいものと難しいものがある。自分は一番やさしいポイ活から始めた。
人と話す・納期:2つの軸で選んだ
引きこもっていた時期に手を出した仕事のうち、続いたものと続かなかったものの差は、だいたい2つの軸で説明がついた。
人と話さないか、納期がないか。
この2つがそろっていたのは、ポイ活、アンケートモニター、自分のペースで書くブログ、それに、注文を受けるのではなく自分で作ったものを売る形の文字起こしだった。どれも、誰とも契約していなかった。
「稼ぎやすいか」ではなく、「続けられるか」で選ぶ。これが自分の仕事探しの土台になった。
カゲの場合:最初の千円は、家の中で湧いた
条件に合うものが何もなかった頃、たまたまスマホで「家にいて稼ぐ」系を検索して、ポイ活にたどり着いた。指示どおりにポチポチやっていたら、いつのまにか1,047円がアカウントに溜まっていた。
バイトなら1時間で稼げる金額だ。でも、親に何も言わず、外にも出ず、誰とも喋らずに手に入ったお金は、それまでのどの千円とも違った。
ただ、その千円で外に出られるようになったわけではない。翌日もコンビニは怖いままで、電話も無理だった。変わったのは、「自分にもお金を引っ張ってくる回路がある」と分かったことだった。
そのあと、月3万円くらいまで届いた時期がある。それ以上を稼ごうとすると、やりとりや納期のある仕事を増やすしかない。そうなると「やらなきゃ」が出てきて、稼げないと焦る。引きこもりのど真ん中にいる間は、3万円くらいが一番、生活と噛み合っていた。
カゲの場合:「働け」と「じゃあバイトは?」
家の中にも、怖い言葉があった。
家族から淡々と言われる「働け」は、怒鳴られるより刺さった。働こうとして潰れた過去ごと、「甘え」に変えられる気がした。
ポイ活で少し稼げるようになっても、親には金額を言わなかった。言えば、「じゃあバイトは?」「就活は?」という話が始まる気がして怖かったからだ。期待がかかった瞬間に、気楽にやれていたことが重くなる。
「働いている=会社に勤めている」ではなく、「働いている=自力で何らかのお金を引いてきている」と定義し直してから、「働け」の刺さり方は目に見えて弱くなった。
効かなかったこと
- 「働け」に正論で返すこと。 「今は無理」「準備が整ってない」と返すと、議論が始まる。議論になると、引きこもり側は負ける。エネルギーが数日分削れるだけだった
- 引きこもりのど真ん中で、クラウドソーシングに手を出すこと。 在宅でも、発注者とのやりとりが思ったより重く、納期もきつかった。評価を下げられるプレッシャーもあった。回復期に入ってからなら、何件かできた
今日できること
- 「バイトが怖い」を、中身ごとに分けて書き出してみる。 面接なのか、電話なのか、外に出ることなのか。一つだけ外せる方法がないか、そこから考えればいい
- 応募は、今日しなくていい。 求人を見て閉じた日も、失敗ではない
- 面接も電話もいらないお金の手段を、一つだけ調べてみる。 自分の場合はポイ活だった(ポイ活って危ないのか、何年か使った体感で書く)
- 「働いている」の定義を、自分で決めてみる。 千円でも自分で引いてきたら、それは働いた、と数えていい
よくある疑問
バイトの面接が怖い。慣れるしかない?
自分は、面接に慣れる方ではなく、面接を通らない道を選んだ。ポイ活には面接がなかった。クラウドソーシングも、アカウントを作って案件に応募する形で、履歴書を出す場面がない。
バイトに向けて相談したい気持ちがあるなら、働くことの相談に乗ってくれる場所もある(下の「サポステ」を参照)。どちらが正しいという話ではない。
応募の電話がかけられない
自分も電話は今でも苦手なままだ。仕事を選ぶときは、「電話なし」を最初の条件にして、その条件で成り立つものだけにした。選択肢は狭くなるけれど、狭くした方が長く働ける、と自分は思っている(電話が怖い問題との付き合い方(仕事の現場で))
働くのが怖いのは、甘え?
国の資料は、引きこもりを「その人そのもの」ではなく、状態として説明している。外出が減ったきっかけで一番多いのは退職だった。働くのが怖いことを、性格だけのせいにしなくていいと思う。罪悪感の話はこっちにまとめた → 引きこもりの罪悪感がつらい。甘えなのか?元当事者が罪悪感を減らせたこと
ブランクが何年もある。もうバイトも無理?
空白が長いほど、履歴書を出す道はしんどくなる。ただ、履歴書のいらない道なら、空白の年数を書類で見せる場面そのものがない。期間のデータはこっちにまとめた → 引きこもりは何年で手遅れ?期間の実データと、年数より先に見てほしいこと
それでもバイトをしてみたい。相談できるところは?
「地域若者サポートステーション(サポステ)」は、厚生労働省が委託している支援機関だ。仕事や学校に行っていない15〜49歳で、「働く」への一歩を踏み出したい人が対象。無料で相談でき、全国にある。
出典:厚生労働省「サポステ[地域若者サポートステーション]」
ただ、公式サイトにも「まずは電話での第一歩」とあるように、入口は電話のことが多い。自分は、家から出られない段階だと早すぎる気がして、結局使わなかった。就労に限らない、ひきこもり専門の相談窓口もある(ひきこもり地域支援センターとは?電話できない人のための、相談の中身と窓口の探し方)
まとめ
- 引きこもっていた頃の自分には、バイトは無理だった。面接・電話・外出が全部重なっていた
- 外出が減った理由で一番多いのは、どの年代でも「退職したこと」。働くのが怖くなっても不思議ではない
- 「バイトが怖い」は一つの怖さではなく、面接・履歴書・電話・外出・人とのやりとりに分けられた
- 分けると、一つずつ避ける方法があった。自分は、面接も電話も外出もいらないポイ活から始めた
- 「働いている」の定義を自分で広げたら、「働け」の刺さり方が弱くなった
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