引きこもりで美容院に行けない。元当事者が髪をどうしていたか(散髪・自分で切る)
先に言うと
- 自分の場合、美容院が無理だった理由は「髪を切られること」ではなかった。予約の電話から次回予約の話まで、会話と対面が続けて来ることだった
- 美容院に行けない時期は、会話が20秒ぐらいで済む1000円カットに行った。それも無理な時期は、すきバサミで前髪と横だけ自分で切った
- 「美容院に行けるようになる」を目標にしなくてよかった。美容院なしで回る生活を組んだら、髪の問題は生活の問題から外れていった
引きこもっている間、美容院に行けず、髪が肩に届くまで伸ばしっぱなしにしていた時期が自分にもある。
「美容院 怖い」で検索すると、会話が苦手なら最初に伝える、空いている時間に予約する、といった美容室側の助言が多く出てくる。どれも、美容院に行く前提の話だ。行けない側から、何が無理で、代わりにどうしていたかを書く。自分の体験をそのまま書いた記事はこっちにある → 美容院・散髪に、行けなくなった話
美容院の「どこ」が無理なのかを分ける
自分の場合、怖かったのは髪を切られることではなかった。美容院では、会話と対面の場面が切れ目なく続く。それを一つずつ並べると、こうなる。
| 美容院で起きること | 自分が行った1000円カットだと |
|---|---|
| 予約の電話をかける | 予約がいらない(または簡単な予約) |
| 受付で「こんにちは」を言う | 券売機で券を買う。「カット1つ」と言うか、指差す |
| 「今日はどうします?」と聞かれる | 「いつも通りで」か「短めで」で済む |
| 鏡越しに1時間、目が合い続ける | 10分で終わる |
| 「どこに住んでるんですか」「仕事は何されてます?」の雑談 | ほぼない。会話は合計20秒ぐらい |
| 「次回の予約どうします?」 | その話がない |
当時の自分は、左の列のどれか一つだけで、その日の気力を使い切っていた。それが一度の来店に全部並ぶ。無理だったのは散髪そのものではなく、この流れを最後まで通り抜けることだった。
だから、もし美容院が怖いなら、表のどの行が一番無理なのかを先に見てほしい。全部が無理なのか、予約の電話だけが無理なのかで、選べる手が変わる。
1000円カットの料金や、予約がいるかどうか、券売機があるかどうかは、店によって違う。行く前に、その店の公式ページで確かめてほしい。
行けない度合いで、手を変えていた
自分がやっていたのは、その時期に出せる力に合わせて、手を一段ずつ下げることだった。
| その時期の状態 | 自分がしていたこと |
|---|---|
| 一般の美容院に行ける | 行く(自分は、ここ数年行っていない) |
| 会話と対面がきつい | 1000円カットで10分 |
| 1000円カットも無理 | すきバサミで、前髪と横だけ自分で切る。後ろは適当に切るか、放置 |
| 自分で切ることもできない | 切らない |
どの状態のときも、間違いではなかった。切れる日は切る、切れない日は切らない。これで、生活は止まらなかった。
カゲの場合
ここからは、自分が実際にどうしていたかを書く。
1000円カットで、会話が20秒になった
美容院に行けなくなってから、最初に通えたのは1000円カットだった。上の表の右の列のとおり、会話は合計で20秒ぐらい、店にいるのは10分ほど。
髪を切りに行くことは、自分の中で「人と1時間話すこと」とセットだった。1000円カットに行って、その二つは切り離せると分かった。
それも無理な時期は、自分で切った
1000円カットにも行けない時期は、100均のすきバサミを使って、洗面台で自分で切っていた。切るのは前髪と横。後ろは雑に切るか、そのままにした。
切りすぎたり、段々になったりした。でも、外に出ない間は家族しか見ないので、困らなかった。家族に聞かれたら「自分で切った」とだけ答えた。それ以上聞かれたら、部屋に戻った。
行かなかった理由が、お金だった時期もある
美容院が怖い、とは別に、切りに行くお金を親に言い出せない時期もあった。
引きこもっているうちに、小遣いはいつのまにか渡されなくなっていた。それでも髪は伸びる。親にお金を頼むたびに何かが削れていく感じがあって、最後は頼めなくなった。頼めないから、髪も切りに行かなかった。
変わったのは、ポイ活で自分のお金を少し作れるようになってからだった。髪を切るお金を、誰にも言わずに貯められるようになった。散髪代を自分で出せるようになったのは、漫画や服よりだいぶあとだった。
伸びた髪で、外に出るのも怖かった
引きこもっていた頃、外で一番避けたかったのは、地元のコンビニで昔の同級生とばったり会うことだった。頭に浮かんでいたのは、平日の昼、伸びっぱなしの髪とよれたジャージで鉢合わせる場面だった。
同級生に会わないために、マスク、帽子、眼鏡、フードで、遠目に自分だと気づかれないようにしていた。マスクは自分にとって、感染対策ではなく、顔を隠すための装備だった。
切りに行けたのは、親の視線を止めたかったから
伸ばしっぱなしの髪で後ろめたかったのは、外の人の目より、家の中の親の目だった。すれ違うたびに髪を見られている気がしたし、「切らないの?」と言われたこともある。それがしんどくて、1000円カットに行った。自分のためというより、親の視線を止めるためだった。切ったあとしばらくは、家の空気が少し柔らかくなった。
あとになって、髪を切るかどうかを他人の目で決めなくていい、と思うようになった。家族以外に見せないなら、自分が重い・邪魔・暑いと感じたときに切れば足りる。
今日できること
- 上の表で、美容院のどの場面が一番無理かを一つだけ選ぶ。 全部が無理なのか、一部だけなのかで、選べる手が変わる
- 前髪が邪魔なだけなら、前髪だけ切る。 すきバサミは通販で買える。全部を一度に整えなくていい
- 1000円カットに行くなら、言う言葉を一つだけ決めておく。 自分は「いつも通りで」か「短めで」だった
- 今日は切らない、と決めてもいい。 髪を切らない月が続いても、生活は止まらなかった
よくある疑問
何年も美容院に行っていない。今さら行ったら変に思われる?
美容師がどう思うかは、自分には分からない。自分は、一般の美容院にはここ数年行っていない。行っているのは、会話がほとんどない1000円カットに、半年に1回ぐらいだけだ。「久しぶりに美容院に行く」を乗り越えなくても、髪は切れた。
「会話が苦手です」と伝えればいい?
美容室側の助言としてよく見かける。自分の場合は、伝える必要のない形を選んだ。行けたのは、会話が20秒ぐらいで終わる1000円カットだった。
家に来てもらって切ってもらうことはできる?
美容師や理容師が店の外で仕事をすることは、法律で原則として禁止されている。例外の一つが、「疾病その他の理由により、美容所に来ることができない者」に対して行う場合で、ほかに都道府県などが条例で決めた場合もある。理容師(床屋)にも同じ決まりがある。
出典:美容師法・美容師法施行令、理容師法・理容師法施行令
法令の文面には「引きこもり」という言葉は出てこない。引きこもりで店に行けない場合がこの例外に当てはまるのかは、自分には分からない。使ってみたいなら、申し込む前に、自分の状況で頼めるのかを事業者に確かめてほしい。
自分で切ると、失敗しない?
失敗する。自分も、切りすぎたし、段々になった。でも、外に出ない期間なら、見るのは家族だけだった。後ろが難しければ、前髪と横だけでいい。
散髪代を親に言い出せない
自分も言えなかった。言えないなら、言わずに済む形を一つ作るのも手だと思う。自分の場合は、ポイ活で作る小さなお金だった(ポイ活って危ないのか、何年か使った体感で書く、ニートのポイ活、現実的な月収(盛らない))。
まとめ
- 美容院で怖かったのは、髪を切られることより、予約・受付・注文・鏡・雑談・次回予約と、会話と対面が続けて来ることだった
- どの場面が無理かを分けると、選べる手が見える。自分には、会話が20秒ぐらいで済む1000円カットが合っていた
- それも無理な時期は、すきバサミで前髪と横だけ自分で切った。それも無理なら、切らなかった
- 切りに行けなかった理由が、怖さではなくお金だった時期もある。ポイ活で少しお金を作れるようになって、髪を切るお金を誰にも言わずに貯められるようになった
- 家に来てもらう美容・理容は、法令で例外として決められた場合に限られる。引きこもりが当てはまるかは自分には分からないので、申し込む前に事業者に確かめてほしい
- 美容院に行ける状態を「治す」のではなく、美容院なしで回る生活を組めば、それで足りた
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