知りたいこと

引きこもりの将来が不安でたまらない。将来どうなるのか、元当事者が不安を分けて軽くなったこと

先に言うと

  • 将来が不安なのは、自分だけじゃない。内閣府の調査では、引きこもり状態にある15〜39歳の約7割が「自分の将来に明るい希望がない」の側に答えている
  • 自分の場合、将来不安は一つの塊ではなく、「30歳・40歳」「親の死後」「自分に何ができるか」に分かれていた。分けてみると、そのほとんどは「今は答えが出ない問題」だった
  • 不安が軽くなったのは、答えが出たときではなかった。「何もしてない」から「少しだけしてる」に変わったときと、考えても仕方ない問題を保留にしたときだった

自分は来年も引きこもっているのか。30歳になったら、40歳になったら、どうするのか。親が死んだら、何で食っていくのか。

引きこもっていた頃、自分は夜になるとこういうことを考えて、眠れなくなった。その将来不安が何でできていたのか、何をしたら軽くなって、何をしても軽くならなかったのかを書く。

「将来どうなるのか」の答えは、ここでは出せない。出せないということ自体が、この不安の正体に近いと思っている。

将来不安は、何でできていたか

夜、自分の頭に押し寄せていた将来不安を、中身ごとに並べ直すとこうなる。そのほとんどが「今は答えが出ない問題」だった。

不安の中身今、答えが出るか
来年も、10年後も引きこもっているのか出ない。10年後の自分がどうなっているかは、今分かるはずがない
30歳、40歳になったらどうするのか出ない。ただ、「歳を取ったら終わり」という前提には、思い込みが混ざっていた
親が死んだら、何で食っていくのか今の時点で完全には準備できない。ただ、「何を知らないか」は書き出せる
自分に何ができるのか出ない。やってみないと分からない

解決できないから、考えても答えが出ない。答えが出ないから、延々と同じところを回る。自分にとっての将来不安は、解決できない問題を、夜に一人で考えている状態だった。

昼の問題は、行動で解決できることが多かった。お金がないならポイ活を始める、食料がないならコンビニに行く。将来不安が厄介なのは、行動で片付く種類の問題ではない、というところだった。

「歳を取ったら終わり」は、思い込みが混ざっていた

年齢の不安を分けてみると、怖かったのは歳を取ること自体ではなかった。歳を取ったら、もう取り返しがつかないという感覚の方だった。50になったら無理、60になったら無理。そういう「タイムリミットを過ぎたら終わり」という前提が、頭にこびりついていた。

引きこもりを抜けてから分かったことがある。自分が今やっているのは在宅で稼ぐことで、ここには年齢制限があまりない。何歳から始めても、画面の向こうからは年齢が見えない。

「親の死後」は、輪郭がないから膨らんでいた

「8050問題」という言葉を最初に見た時、自分はまだ親の家にいた。数字を見ただけで、胸の奥がざわっとした。引きこもっていた頃の自分にとって、親は「ずっと元気でいる人」で、その無意識の前提が、この数字でちょっと崩れた。

そこから湧いた怖さは、具体的に何が怖いか聞かれても答えられない種類のものだった。親が死んだら詰む。自分は一生家から出られない。漠然とした恐怖は、輪郭がないぶん無限に膨らむ。

なぜ、夜になると重くなるのか

将来不安は、昼より夜の方が何倍も重かった。

夜、電気を消して布団に入ると、勝手に頭が走り出す。来年のこと、30歳のこと、40歳のこと、親の死後のこと。それが眠る直前に、一気に押し寄せる。布団の中は、不安を増幅する装置みたいなところがあった。

眠れない。寝返りを打つ。スマホを見る。スマホに逃げても、不安はバックグラウンドで動いている。気付いたら4時。朝になって寝落ちして、起きたら昼すぎ。生活リズムが崩れて、さらに不安になる。このループだった。

親の死後のことも、検索するのはだいたい深夜だった。昼は目の前の現実を回すのに必死で、親の死まで考える余裕がない。家族が寝静まった頃、天井を見上げていると、ふと浮かぶ。

カゲの場合:不安が軽くなったこと

不安は、完全には消えなかった。今でも夜の不安は時々来る。でも、眠れない夜の頻度はかなり減った。ここからは、何が効いたかを書く。

「何もしてない」から「少しだけしてる」に変わった

いちばん効いたのは、自分の状態が「何もしてない」から「少しだけ準備してる」に変わったことだった。

具体的には、ポイ活で月3000円ぐらいが安定して入り始めた頃だ。月3000円は、将来の不安に対しては、ほとんど何の解決にもなっていない。でも、「毎月ゼロ円の人間」ではなく「毎月3000円は自力で作れる人間」になったことが、夜の不安の量を地味に減らした。

金額の問題ではなかった。「準備してる状態」になったこと自体が、効いた。

不安が来る時間に、小さい作業を入れた

自分の場合、不安が一番来やすいのは夜10時から12時ぐらいだった。その時間に、ポイ活のアンケートを数本こなすようにした。

1問ずつ答えていくだけで、頭は使わない。でも、頭が「不安を巡回する」モードから「作業を処理する」モードに切り替わる。10〜20分の作業で、30分ぐらい不安のループが止まる。そうすると、寝られる確率が上がった。

気を紛らわせているだけだ。でも、その「気を紛らわす」が、夜の数時間を救った。

漠然とした恐怖を、「知らない項目リスト」にした

引きこもりを抜けたあと、「自分が今、何を知らないか」を紙に書き出した日がある。思っていたより、項目は少なかった。

項目になると、「分かってる」「分かってない」で仕分けられる。漠然とした怖さが「知らない項目リスト」に変わると、ぐるぐるは止まった。

引きこもっていた頃、親の死後のことを夜中に検索していたときも、調べたから怖さが減ったわけではなかった。ただ、「親が死んだら詰む」という漠然とした恐怖より、手続きの形が見えた恐怖の方が、扱いやすかった。

書き出した項目と、親の死後の手続きは、親の死後の記事にまとめてある。

考えても仕方ない問題は、保留にした

「親が死んだ後どうするか」は、長いこと自分の中で最大級の不安だった。ある時期、これについて考えるのを、意図的にやめた。

  • 今考えても、親はまだ生きている
  • 具体的な年数も、状況も、分からない
  • 考えるほど、現実から離れた最悪のシナリオが作られる
  • 結果、目の前の今の生活が崩れる

「今考えても、今の生活を壊すだけ」の問題は、保留にしていい。そう思うようになった。楽観ではなく、優先順位の問題だった。今月を生き延びる方が、親の死後を心配するより先。

そのかわり、親の死後のことを考えるのは一回だけでいい、と決めた。メモを書いたら引き出しにしまって、今日の生活に戻る。毎日考えていると、引きこもりの夜が全部、親の死の準備で埋まってしまう。

年齢のカウントダウンを、自分でやめた

引きこもっていた頃、自分は「若いうちの寄り道」だと思おうとしていた。まだ若いから、あと何年かしたらどうにか戻れる。その言い訳が、年齢とともに静かに使えなくなっていく感じは、わりとしんどかった。

変わったのは、中高年の引きこもりが若者より多いという数字を見てからだった。最初は不安の方が先に来た。でも、しばらくして、歳を取ってもこの状態でいることは「自分だけが落ちこぼれた特殊な末路」ではない、と思えるようになった。

35歳まで、いや30歳まで、という締め切りは、かなり自分で盛ったものだった。結局、自分が抜けたのも、「若いうち」と勝手に決めていた期限よりだいぶ後だった。カウントダウンをやめられた分だけ、夜が少し静かになった。

自分だけじゃない、と知った

「引きこもり 自分だけ」と検索していた途中で、引きこもりが推計100万人を超えるという数字に行き当たったことがある。それで生活が良くなったわけではない。翌日も布団から出られなかった。

でも、検索ワードは少し変わった。「引きこもり 自分だけ」の代わりに、「引きこもり 在宅 仕事」「家でできること」と検索できるようになった。自分を珍しがる検索から、自分にできることを探す検索への切り替わりだった。

効かなかったこと

将来が不安なのは、自分だけじゃない

内閣府が2022年度に行った調査で、15〜39歳の人に「自分の将来について明るい希望を持っていますか」と聞いている。引きこもり状態にある人の約7割(70.8%)が、希望がない側(「どちらかといえば希望がない」+「希望がない」)に答えていた。それ以外の人では約3割だ。

出典:内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」。回答者は引きこもり状態の人144人、それ以外の人6,891人

将来に希望を持てないのは、引きこもっている人の中では、むしろ多数派の感覚だということになる。

もう一つ、「今の自分を変えたい」と答えた人は、引きこもり状態の人の方が多かった(約76%。それ以外の人は約66%)。この調査だけで理由までは分からない。ただ、少なくとも「将来のことを何も考えていないから家にいる」という像とは合わない。ここからは自分の推測だけど、何も考えていないのではなく、考えているから不安なんじゃないかと思う。

「将来どうなるのか」について、分かっていること

将来どうなるのかを、個人ごとに言い当てられるデータはない。ただ、「どうなりやすいか」の一部は、国の資料で分かっている。

出典:厚生労働省「ひきこもり支援施策について」

将来が不安な夜に、やっていいこと

  1. 不安を、項目に分けて書き出してみる。 「10年後」「30歳・40歳」「親の死後」「自分に何ができるか」。それぞれ、今答えが出るかどうかだけ、横に書く
  2. 答えが出ない項目は、今夜は保留にしていい。 今考えても、今の生活を壊すだけの問題もある
  3. 不安が来やすい時間に、頭を使わない小さい作業を一つ入れる。 自分の場合はポイ活のアンケートだった(ポイ活って危ないのか、何年か使った体感で書く)
  4. 「何もしてない」を「少しだけしてる」に変える手段を、一つだけ調べてみる。 金額は小さくていい(ニートのポイ活、現実的な月収(盛らない))
  5. 親の死後のことは、一度だけ調べて、しまう。 備えるのは1回でいい(親の死後に来る手続きの整理)

よくある疑問

引きこもりの将来は、結局どうなるの?

分からない、というのが正直なところだ。個人の将来を言い当てられるデータはない。分かっているのは、長く続く人も、中高年になってもこの状態の人も、珍しくはないということ。期間のデータは 引きこもりは何年で手遅れ? にまとめた。

30代、40代になってからでは、もう遅い?

期間のデータを見る限り、長く続いている人も、中高年でこの状態の人も、珍しくはない。年数や年齢で細くなるのは、「空白なしで正社員になる」というルートの方だと思う。詳しくは 引きこもりは何年で手遅れ? に書いた。

親が死んだらと思うと、眠れない

自分もそうだった。親が亡くなったあとに来る手続き、期限、お金が尽きそうなときの窓口は、引きこもりのまま親が死んだらどうなる? に順番に並べた。一度読んで、必要なところをメモしたら、あとはしまっていいと思う。

お金の不安が、一番大きい

自分の場合、効いたのは、大きく稼ぐことではなく、月3000円でも自分で作れる状態になることだった。国民年金の保険料が払えなくて不安なら、免除の仕組みがある(引きこもりの国民年金は免除できる?)。

兄弟に迷惑をかける将来が怖い

親の死後、兄弟とのあいだで法律上どうなるのか(扶養の義務、相続、生活保護の申請のときの調査)は、親の死後の記事の「兄弟がいる場合」にまとめた。法律上の義務と、兄弟が実際に援助できる範囲は、同じではない。

誰かに相談した方がいい?

相談できるなら、した方が楽になることはあると思う。電話が無理でも、メールやSNSで受け付けている窓口もある。ただ、どこまで対応しているかは窓口による。どんな場所かは ひきこもり地域支援センターとは? に整理した。

将来のことを考えると、消えたくなる

消えたいと思うほどなら、それを一人で抱えないでほしい。厚生労働省の「まもろうよ こころ」には、電話の窓口のほかに、SNSやチャットで相談できる窓口も載っている。声を出さずに、文字で相談することもできる。

まとめ

  • 内閣府の調査では、引きこもり状態にある15〜39歳の約7割が「将来に明るい希望がない」側に答えている。将来が不安なのは、自分だけではない
  • 自分の将来不安は、「10年後」「30歳・40歳」「親の死後」「自分に何ができるか」に分かれていて、そのほとんどは今は答えが出ない問題だった
  • 夜に重くなるのは、答えの出ない問題を、布団の中で一人で考えるからだった
  • 効いたのは、「何もしてない」から「少しだけしてる」に変わること、不安が来る時間に小さい作業を入れること、備えるのは1回にして残りは保留にすること
  • 夜中の検索、締め切り、自責の上乗せは、不安を軽くしなかった

不安の波は止められなかった。でも、波の高さは低くできた。


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